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川島なお美さんが、遺著で「がん放置療法」を告発! その3

M先生のがん放置療法を考えるうえで、大きなポイントが2つあります。

 

1.がんを外科手術や抗がん剤で治療した場合と、がんをそのままにして放置した場合でどちらが有効なのか、同一人物では、データ検証しようがない。

 

2.身体にメスを入れる手術や、副作用に強い抗がん剤を使えば、体力も落ちるし、そのことにより、寿命を短くしてしまうことは現実としてある

 

1.のポイントは、がん放置療法の、奇襲ポイントです。手術をして、がんを取り除いた、その後、抗がん剤治療をして、再発を防ぐ、という標準的ながん治療を行い、数年間再発がない(これを寛解、かんかい、と言います)としても、治療をしなくても、同じ結果が得られた、と主張されてしまうのです。そして、外科医の功名心、製薬会社の抗がん剤治療の陰謀、でやらなくてすむ治療をされている、と。すごいパラドックスですよね。

 

また、2.では、手術(や抗がん剤治療)をすると身体的ダメージで基礎的体力が落ちてしまう、がんを手術するとがん細胞が飛び散って、放置してしまえばおとなしくしているのに転移してしまう、ということを言っています。(体力、免疫力(抵抗力)が落ちれば、がんではなく、感染症で死ぬこともあります。)

 

それを、ご自身の経験から、語っているのです。

 

抗がん剤治療への批判は、辛辣です。

製薬会社の金儲けの謀略で、抗がん剤の効果を証明する論文には嘘があり、実際には、治療上の効果が期待できず、副作用で身体には毒、医療界と製薬業界がグルになって、患者を苦しめている、というのです。

 

そして、外科手術や、抗がん剤治療といった、既存の標準治療は死期を早める、がんは治療しない方が、長生きできる、だから、がんを発見しても仕方ないから、がんの検診すら必要ないとのことです。医療業界の圧倒的多数と、まさに、逆の立場であり、その論陣を張ったがゆえに、講師まで最短で昇進した慶應のエリート医師が、その後は完全に干され、万年講師で定年を迎えることになったわけです。しかし、その強烈な医療業界に対するアンチテーゼは、画期的ですし、反骨、気骨の人、真に患者のことを考える医師、という切り口が、圧倒的なマーケティングポジション(唯一無二性)を与え、文芸春秋がバックについた過去の書籍の売り上げは凄く、M医師が開業したセカンドオピニオン外来は大盛況のようです。

 

私はM医師を学生時代から知る医師に、聞いたことがありますが、優秀は優秀だった、論文ばかり読んでいた、とのことでした。過去の論文の矛盾点に強いのもそのせいかもしれませんね。

 

マーケティングポジションの唯一無二性ゆえ、川島なお美さんの治療へも影響を与えたM医師の理論ですが、上の、1と2の点に尽きると思っています。その上で、真実をズバリつきますと、

 

治療した場合としなかった場合を比較して、同一個人ではどちらが良かったか、検証できない、という理由で、治療をしなくても良い、というのは、ナンセンス。一方、がんの治療で体力を落とし、それが理由で死期が早まるケースがあるというのは、確かだということです。

 

・がんと言われて、治療しなくて良いと言われて、普通、納得できますか?治療をやってもやらなくても同じかもしれなかったら、治療はやっておいたほうが良いです

 

・かといって、あまりにハードな治療をやれば、それが原因の一つとなって、死ぬこともあります

 

私も、末期がんと言われた現実を受け入れることができず、完治をめざし、抗がん剤治療をさまざまに試したものの、薬の副作用がきつく、体調が悪化し、亡くなった患者さんを見ています。

 

患者本人は、完治をめざし、死の可能性を想定していなかったので、現在の治療で、効果がでないとなると、次々と新しい治療を試していきました。完治を目指す以上、他にやり方がなかったのかとは思います。副作用の強い薬により、体力が低下していったのを周りもわかっていましたが、患者本人が、現実を受け入れられない以上、治療を中止するという選択はできなかったと思います。

 

川島なお美さんは、女優という仕事をやり続けるということを第一優先に、治療法を選択したのですが、完治と仕事の両立を狙う中で、最終的には、腹腔鏡のオペを、選択、術後再発しました。仕事のために、最後まで、抗がん剤をやらなかったのですが、これはご自身の一つの判断だと思います。ある意味、生き方を全うされたわけですので、それについて、医師の責任問題を云々を問うことはできないと思います。

 

headlines.yahoo.co.jp

 

昨日ニュースになりました竹田圭吾さんの死去の報、私はこの人の生き方と最後までメディア出演を続けられたこと、メディア側の出演を受け入れたことも含めて、すい臓がんという治癒率のきわめて高いがんとの向き合う姿勢に、非常に感銘を受けました。医師や家族、周囲とのコミュニケーションを最後まで、孤独感にも苛まされながらも、良好に取り続けられたのだと思います。がんというのは、発病しても即死するものではないので、向かい合って、最後までどう生きるかを決めることで、周りも、支えやすくなります。

 

M医師のがん放置療法については、既存の医療業界へのアンチの切り口とマーケティングポジションが良いので、出版社もメディアも、受けるからと思ってメディアプロモーションしているわけで、露出が多いから、がん治療の奇跡を起こす、逆転の切り札のような存在に思わないことが大事です。この人はこれで儲けているんだな、と冷静に見ておかなければなりません。

 

がん放置療法は、その医療業界へのアンチテーゼそのものは、参考意見にはなります。しかし、このノリを持ちこんで一般的な医療機関に行けば、面倒な患者扱いされるのは必至です。がんであることを受容するのは難しいですが、受容し、多様な情報を参照しながら、最後は自分で自分の生き方を決めれば、それに応える医療と、人生を手に入れることができるのではないかと思います。