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川島なお美さんが、遺著で「がん放置療法」を告発! その2

 川島なお美さんは、M医師の何を告発したのでしょうか?

 

1.がん放置療法を広く喧伝し、外科手術や抗がん剤治療は体に毒。がんもどきであっても、転移する本物のがんであっても、がんは放置するほうが長生きする、という主張は、信じてはいけない

2.その理論に影響を受けて、適切な治療を受けるタイミングを逃してしまうような人が増える可能性がある。

このことを多くの人に伝えたいということです。

 

川島なお美さん自身のケースでは、M医師は、「手術しない、抗がん剤治療の否定は正しい」としながらも、肝内胆管がんは、2~3年間は放置療法で元気に生きられるが、いずれ肝臓機能が悪化して死ぬだろう、手術をしても生存率は低い、と冷酷に宣告しました。川島さんが期待していた、「大丈夫、がんもどきです」という言葉はありませんでした。ただ、続いて、ラジオ派(でがんを焼く)治療なら奏功する可能性あり、一度、ラジオ派でがんを焼き切って、様子を見る治療を提案され、光を見た思いがし、M医師とは握手をして、わかれたそうです。そして、すでに、ラジオ派治療の権威とのセカンドオピニオンの予約を取っていたことから、「不幸中の幸い」「私にはそういうことが多い」と喜んだが、実際には、そのラジオ派治療の権威から、胆管がんへの治療効果を否定され、固まってしまった、と。

 

M医師については、川島なお美さんのご存命中にも、すでに、数多くの医師による批判的なコメントも寄せられていますし、M医師の理論に出会わず、がん発見早期段階で、適切な治療を行っていれば、もっと長生きできたのではないかと、川島さんの無念さがあると思います。

 

ネット等で情報発信している医師のコメントを見ると、早期に、適切な治療(開腹しての外科手術)を受ければ、5年生存率が、ステージ1~3の段階で、50-100%であった、というように読める記述があります。

 

 実際のところ、胆管がんは治療が難しいがんなのでしょうか?

zasshi.news.yahoo.co.jp

私が参照した医師の見解では、川島さんはがん発見段階では早期であったので、開腹手術をすれば70%-100%の可能性で、5年は生きられた、ということでした。

また「早期に開腹手術をせずに、(実験的な)腹腔鏡手術をしたことにより、かえって病状が悪化したのでは?(術後早期に再発して、腹膜転移をおこしているのは、このせいである)」というコメントも見られます。

 

M医師が、「このがんは生存率が低く、いずれ死んじゃうよ」と冷酷に言い放ったとは、正義の味方として、患者の側に立つM医師の発言としては、驚きでしたが、実際問題、治りにくいがん種であることは間違いありません。ほかのデータでは、5年生存率は10-40%というのもあり、早期に開腹手術をしていればよかったのでは、という指摘が妥当かどうかは疑わしいです。私も、がん治療を長年経験しているベテラン外科医に聞いてみましたが、「がん発見直後に、早期に手術をしたからといって、結果治ったかと言えば、わからない」というコメントでした。

 

川島さんのケースにおいて、重要なのは、がん発見初期段階での、患者さんの受け止め方、考え方だと思います。

 

川島さんは、女優なので、仕事に影響が出る手術や、副作用の強い抗がん剤治療はしたくないという気持ちがあった。ゆえに、M医師の理論が魅力的に見えてしまっていたのです。

 

そのような状況下で、川島なお美さんが最初に相談した医師は、「とにかく開腹手術」とよく業界で言われる、「外科医の切りましょう、切りましょう」パターンで、川島さんを失望させ、これが医師不信のきっかけとなったのです。

 

この医師不信とM医師の理論により、開腹手術が遅れたことを後で後悔されているような気がします。M医師のがん放置療法の根源は、外科医の功名心と、抗がん剤治療メーカーの金儲けの謀略への不信です。川島さんも根底から医療業界に不信を抱いたのかもしれません。

 

多くの現場の医師は、そのような悪意では、仕事をしていないです。患者さんの気持ちに全面的に適合し、標準的な治療以外に、選択肢を提示するリスクもとれない、余裕もないが現実です。

 

医師の本音は、とにかく、悪化しないようにすぐ手術したほうが、良い、オペ室も患者が多くて、予約一杯なんだから、早く決めてよ、という感じでしょうね。ぐちゃぐちゃ言うな、と。

 

川島なお美さんとしては、女優としての仕事もあるし、手術はしたくない、とにかく手術と言われたら、反発しますよね。そして、いろいろな可能性を求めていく、、、

 

私も、業界人として、こうしたケースは多々見てきました。普通のことを言っていのだが、患者のニーズにマッチしないことを言う医師が悪魔に見え、(背後に悪魔を忍ばせている)功名心を追求し新しい治療法にトライしようする医師や、あり得ない治療実績を誇示して、患者を集める金儲け主義の医師のいうことが耳障りよく、瞬間、天使に見えてしまうのです。

 

肝内胆管がんが2センチ未満の段階で、まだサイズが小さかったので、開腹オペをしていたら、治っていたかもというと想像してみても、患者さん自身が、女優の仕事もあり、それを望んでいない。がんの治癒と、仕事との両立を、かなえる、どちらかというと仕事を優先する、それが患者さんの判断です。M医師の理論が影響を与えたのは、そういう理論を聞きたいという患者さんのニーズがあったから。

 

前提がそこにある以上、その患者さんのニーズをかなえることが是であり、それをかなえない意見・治療法は、全て否になってしまいます。患者さんに都合の良いこと以外は、患者さんの耳に入らなくなります。

 

がんのサイズが進行した後、腹腔鏡のオペをしたことについては、その瞬間は、その担当医が、生涯、心の底から信頼できる医師に見え、患者さんが判断してその治療を選択したのです。

 

腹腔鏡を使った手術は、群馬大学での死亡事故などで話題になっていますが、転移の可能性の小さい、スモールサイズのがんに対して、おなかを大きく切らなくてもよいことから、身体へのダメージがやさしい治療です。一方、がんが大きかったり、転移している場合には、がんを手術で取りきれない可能性があります。実際に、川島さんのがんもすぐに再発しています。

 

ズバリ、川島さんの場合は、①発見時点で早期に回復手術をしてしまう(標準治療をしてしまう)か、仕事を優先して、②手術は一切しない、のどちらかを選択するしかなかったと思います。

①の場合、がんが治る可能性は、若干ありますが、仕事には、甚大な影響が出る。

②であれば、2~3年は元気でいられるけど、いずれは、体調が悪化し、死ぬ

 

がんを完治させ、仕事にも影響を与えない、患者さんのニーズをかなえることは、できません。しかし、現実を直視し、考えられる中で一番ワーストの可能性を想起し、そこからプラスを積み上げて、最終的にベストを追求していくことが大事だったと思います。こうした発想を持てる人は、医療関係者も、精いっぱい、応援したいと思うものです。当初の想定よりも長生きしているがんの患者さんはこうした方が多いのです。

 

極端な理論や、魔法のような治療法は、それを提唱している人の功名心や、利益のために行われていると見て、(どんなに耳触りの良いことを言われても)それに傾倒することは、避けるべきだと思います。

 

川島なお美さんは、最初の担当医の手術至上主義的姿勢も、M医師のような放置療法の考え方も、許しがたいという風に考えていらっしゃったようですが、患者さん自身による前提の置き方、マインドセットをどうするかということが大事です。

 

最終的には一人一人の人生ですが、長生きを求めるなら、どうするかということです。

 

その観点から、放置療法、を次回考えてみたいと思います。